キングダム5巻 あらすじ

2020-08-07

キングダム5巻のあらすじ。
ネタバレ注意。

第42話 夢幻

ランカイ戦、決着!

背後からランカイを突き刺すことに成功した信。
しかし、ランカイは倒れず信を振り払う。

睨み合う両者。

「戦意ねェ奴は寝てろ‼」
信が強く睨みを利かすとランカイはうなだれ床に伏す。

「どうしたランカイ。立てっ‼ 立たんか化猿が。立ってその虫けらどもをつぶせ‼ お仕置きだぞ‼」
”お仕置き” という政蟜の言葉にも反応せず、ここでランカイと戦いが決着した。

「ひいいいいいっ」
竭氏一派が逃げようと左龍の回廊へ向かう。
しかし、なぜか扉はなぜが開かない。

「今度こそ終わりだ!」
一人取り残された政蟜の元に信、バジオウ、シュンメンが詰め寄る。
今まで余裕だった政蟜の顔色は変わり取り乱す。

「きっ、貴様らまさかこの俺をっ。下民の分際で王族であるこの俺をっ…、斬ろうとでも言うのか‼」

「それ以外ねぇだろ」

「ふざけるな‼ バカか貴様は‼ そんなことが許されるとでも思っているのか‼ 玉座に在る王をっ、そんなことっっ、有り得ぬわァ‼ 」

「あるんだよ。戦争だからな。しかもお前が始めたんだ! 大人しく観念しろ」

政蟜は自分の最後を悟ったのか放心し立ち尽くす。

竭氏の最後

……なぜこうなった
嬴政、昌文君、王騎、楊端和、山の民、下民のガキ…
奴らの勝因は何だ?

…………
全てだ。どれか一つでも欠けていればこうはならなかった
奴らもまた綱渡りでここまで来たということか。

………口惜しい…。
これまであの政蟜にひざまずき費やしてきた労が…
いやその前から…
中級大臣より始まりあらゆる手を尽くして丞相に登りつめた労が!
国の半分を手にした権が!
呂氏を殺し秦国を独占する夢が‼
全てが消える。
全てが……

ふざけるな‼
儂はまだ終わっておらぬ‼
城外に出れば8万の軍が待機しておる‼

竭氏はここで ”生” への執着をみせる。
左龍の回廊へ繋がる扉に群がる配下を押しのけ自分だけでも逃げ切ろうとするのだ。

そのとき、開かなかった扉が開く。
しかし、扉からはなぜか王騎軍副官の騰が現れ、扉に群がっていた竭氏配下4名の首を刎ね飛ばす。

「残念ながらここを通すわけには参りませぬ。我が殿の命により扉に近づく者は斬り捨てさせていただきます」

突然現れた騰に退路を断れた竭氏たちは右龍の回廊から逃げようと進路を変える。
しかし、右龍の回廊前では河了貂がムタから貰った吹き矢で狙いを定めていた。

河了貂が放った吹き矢は先頭で逃げてきた竭氏の目に命中。
視界を失った竭氏は走る勢いそのままに扉に激突。
バジオウ、シュンメンに斬られるのだった。

第43話 怪鳥飛来

刺される貂

バジオウ、シュンメンに斬られた竭氏の首が転がる。
これは政たちの勝利を示していた。

しかし、この時事件が起きる。
主を失い気が動転したのか、竭氏配下の一人が隠し持っていた短刀で河了貂を刺してしまうのだ。

苦痛の表情で床に崩れ落ちる貂。
信は状況を整理できていない様子。
そして政蟜がこの隙をついて正面扉から逃げてしまう。

「何をしている信っ。政蟜を追えっ‼」
壁が叫ぶが、信は河了貂のもとへ。

河了貂の脈はしっかりしていた。
驚いて気を失っただけのようだ。
「おい、チビガキ。もう少しで念願の大金が手に入るんだぞ。あんなひでェ村での生活とは大違いのすげェ暮らしが待ってんだ。こんなもんでくたばんじゃねェぞ‼」

信は壁に河了貂を託し政蟜を追う。

逃げる政蟜

間違いだ…
これは何かの間違いだ

確かなことは俺が王であるということ

俺が王
俺が王
俺が王

俺がっ
俺が王だっ‼

夢中で走る政蟜が辿りついたのは戦いが続いている公龍の広間であった。

「⁉ 政蟜様⁉ なぜこんな所へお人でっ……。一体っ…。なぜお一人で参られたのです。丞相や他の大臣たちはどうされました⁉」
政蟜の存在に気付いた肆氏が問う。

政蟜は本殿で起こったことを説明し、何とかしろと肆氏に迫る。
この政蟜と肆氏のやり取りに昌文君が気付いたときである。

広間での戦いを見物していた王騎将軍が広間に降り立つのである。

第44話 昭王

王騎将軍に続き、続々と王騎兵が広間に降りてくる。

王騎将軍の突然の登場。
王騎将軍が何をしにここへ来たのか考えを巡らせる肆氏。

昌文君の偽の首を差し出し、昌文君の領内の人間をもかばった王騎将軍が味方でないことを察した肆氏は、王騎軍との戦いになるなら勝機は王騎将軍の首をとる以外にないと思案している。
それは肆氏の右腕、魏興も同じであった。

「王騎将軍。貴殿に一つ聞きたいことがある。なぜ偽りの昌文君の首を刺し出した⁉ 納得のいく答えがあろうや。なければここで死んでもらう‼」

魏興が王騎将軍に詰め寄った瞬間、信じられないことが起こる。
王騎将軍が放った一刀が、馬上の魏興を真っ二つに斬り裂いたのである。

何事もなかったかのように前進する王騎将軍。
その圧倒的な存在感を前に皆が道を開け王騎将軍の姿を目で追う。

真っ直ぐ政に向かい歩く王騎将軍。
昌文君と楊端和が政を護るように政の前に出る。

鎖帷子(くさりかたびら)

その頃の本殿。
刺された河了貂の手当をしようとする壁。

信は気を失っているだけだと言っていたが、急所を深々と刺される貂を見ていた壁は助かるはずはないと思っていた。
しかし、止血しようと河了貂が着ている着ぐるみを脱がせ安堵する。
河了貂はいつもの着ぐるみの下に鎖帷子を着込んでいたのだ。

着込んだ鎖帷子のおかげで刃は深く通らなかったが手当は必要。
鎖帷子を外し止血しようと貂を見た壁は、何かに気付き驚きの表情を見せる。

虚しい鳥

「何をしに来た王騎。魏興を斬ったということは政蟜を裏切りこちらにつくということか?」
昌文君が問う。

「ンフフフ。ご冗談を。あまりに可愛いらしいじゃれ合いが続いていたので少々場を濁しに来ただけですよォ」

「将軍よ。用件があるなら早く言え。俺たちは忙しい。今、お前に構っているヒマはない!」
政が王騎将軍の前に歩み寄る。

「では一つだけ質問させて頂いて宜しいようか。貴方様はどのような王を目指しておられますか?じっくり考えてお答え下さい。この宝刀は不遜な言葉を許しませんよォ。相手が誰でありましょうとねェ」
王騎将軍の顔色が変わる。

「中華の唯一王だ」
回答次第では魏興のように真っ二つに斬られる危険があるなか政は即答。
場がざわつく。

「……。この500年の大乱。そんな無謀な言葉を口にした王は一人しか知りません。かつて ”戦神” とまで畏れられた…」
「昭王の名は二度と口にするな!それがお前のためだ」
王騎将軍の話を遮り政が話始める。
ムッとした表情をする王騎将軍。

「”戦神 昭王” 在位約55年間のうち、そのほとんどを戦に投じた我が曽祖父。彼を王と慕っていたのはお前だけじゃなく、秦国中の武人が自ら命を差し出すほどに忠を尽くした。
しかし昭王がしんでもう7年だ! 王騎、お前はっ、最愛の主を失い着陸する場所を求めてもがき苦しんでいる虚しい鳥だ!
昭王の影を追っている限りお前の降り立つ所などないぞ。無論、俺からお前の寄り木になってやる気など毛頭ない。
だが、もし俺と共に戦いたいと願うのなら昭王の死を受け入れ一度地に足をつけよ。
中華に羽ばたくのはそれからだ。”信の怪鳥” よ!」

第45話 対峙

キトクな王

「及ばずか……。ワシの夢、お前に託すぞ王騎」
「ご冗談を。大王を失っては私はもう飛べませんよ」
45話は王騎将軍の回想から始まる。

「クフフフ。情けないことを申すな。ワシが信でも戦場は無くならんぞ」
「しかし、熱き夢を求める戦場は無くなります」

「そうか?ワシ他にも中華を求める王はいくらでもおるぞ」
「口だけですよ。目を見れば分かります。本気で夢を描いて恋焦がれているかどうかは。本物は大王のように瞳に少年の輝きを宿しています」

「クハハハ。少年ときたか」
「実際のところ中華を求める王などどこにもいませんよ。すでに満ち足りている国王はわざわざ過酷な道を選びません。この争乱の世。どの王も小競り合いを繰り返して現状維持で満足するのです」

「手厳しいな。他の王も頑張っておるぞィ」
「いいえ!我が王のように生涯を中華追いささげたキトクな王は他にいません!現れません!」

「キトクな王か。クフフ。”戦神” じゃからな。じゃが ”戦神” と呼ばれても不老不死ではない。瞳は少年でも身体は老人じゃ。……。口惜しい。あと20年生きれれば…。夢をつかめたやもしれぬ。」
王騎将軍の回想では王騎将軍が大王と呼ぶ老人と王騎将軍、それに昌文君の姿がある。

「王騎よ。飛ぶのはやめても牙は磨いておれ。お前ほどの武人が地に埋もれるのは許せぬ。今はいなくともこの先、ワシのような王が再び現れるやも知れぬ。………。王騎よ、その刻は今以上に大きく羽ばたくのだ」

悪くない

回想シーンが終わり現実世界。
王騎将軍は政を見つめ考えを巡らせている。

昭王亡きあと、数多くの王が私を召し抱えようと声をかけてきましたが、”中華” だ ”天下” だと軽々しく語る王ばかりで ”本物” は一人もいませんでした

しかし、この若王の口から放たれる ”中華” という言葉は異様なほどに重い!
そしてその目は一点の曇りなく内に強く光っている

悪くない
昭王とはまた違いますが悪くないですよォ

昭王の目は ”中華” に恋焦がれる夢追い人の目でした
しかし、この王にはそんな甘き輝きは微塵もない
この目はしっかりと ”中華への路” をとらえている

ンフフフ
若さゆえのおごりとも言えますが、それにしてもそんな目で中華に臨む王は未だかつて一人もいませんでした

これが第31代秦王 嬴政か!

兄弟の遭遇

「何だ? 先程から押し黙って。今ならやれるんじゃないか?」
「魏興様の仇だ。大王と共に王騎も討つぞ」
魏興兵がヒソヒソと相談し始めたとき、
「ンフ。ンフフフフフフフフフッフフフフフ」
王騎将軍が突然笑いだす。

「昌文君、あなたが一人でバカ熱くなっている理由が少しだけ解りましたよォ。ンフフフフ。なかなか楽しい問答でしたねェ。今日のところはこれで引き上げるといたしましょう。全軍撤収です!」
そう言い残し王騎将軍は引き上げていく。

王騎軍が撤収していく中、政蟜が何かに気付き振り返る。
後方から信、バジオウ、シュンメンが迫っていたのだ。
バジオウの剣先には竭氏の首が刺さっていた。

慌てて逃げる政蟜。
兵たちを押しのけ政たちのいる前方へ進んでいく。
そして政に遭遇。
この騒動の主役二人が遂に顔を合わせるのであった。

第46話 兄弟

「嬴政‼ こやつが嬴政だァ‼ 殺せっ、殺せェ‼」
政蟜が叫ぶが、兵たちはなぜ政蟜がここにいるのか理解できずに戸惑っている。

そこに竭氏の首をかかげたバジオウたちが登場。
兵たちも自軍の敗北を悟る。

「来てみろ下衆が‼ 直々に斬りふせてくれるわ」
政蟜が近づいて来る政に吐き捨てる。

「政蟜。お前は生まれの良さが人の価値の全てと勘違いしたただのバカガキだ。お前のような愚か者いは決して王などつとまらぬ」
「ク…ククク。半端者が偉そうに。では貴様に王がつとまると言うのか⁉ 半分庶民の血を引く半端な王族の貴様が民を支配できるのか⁉ 俺は貴様を認めぬぞ‼ より純潔なる俺こそがより強力に民を支配し国を強くするのだ‼」
政蟜が斬りかかるが、政はしっかりと剣で受け止める。

「曲がった教育を受けたな政蟜。お前が言っていることは机上の戯言。だが、俺やお前が思う程、民は単純ではない。我らが考えるほどに民は王族のことに関心はない。高みでそり返っているだけで民の心を知らぬお前にできるのは周りを見下すことだけだ! 世をすらぬ人を知らぬ。だからお前はいつも一人だ!」

一瞬、あたりが静寂に包まれる。

「お前では王はつとまらぬ」
政が政蟜に告げる。

反乱 決着‼

「だまれ、だまらぬか。秦国王は俺だァ!!」
政蟜が再び斬りかかる。

血が飛び散り、信、晶文君の顔に緊張が走る。
しかし、血は成の剣が突き刺さった政蟜の右手から噴き出ていた。

「腕がっ。血がっ。血がーっ。ああああっ」
悲鳴とともにのたうち回る政蟜。

「……。血がどうした。これまで大勢が死んだんだぞ。分かっているのかお前は。政蟜。お前は少し人の痛みを知れ」
政は力いっぱい何度も政蟜を殴り付ける。

「勝敗が決した今、殺す値打ちもない……。下らぬことで血を流しすぎた‼ これ以上の流血は無用‼ 全員の命を保障してやる故、直ちに投降せよ‼ 必要最低限の犠牲をもって反乱の決着とする‼」

こうして政蟜の反乱は幕を下ろすのであった。

第47話 最初の城

「ふーーーーーー」
玉座に腰を下ろし政は深いため息をつく。
長かった戦いが終わり、その夜は勝利を祝し宴が開かれた。

河了貂の素性①

「おー盛り上がってますなー。政たちはどこだ~?」
貂もすっかり元気になったようで政たちを探し回っている。

「貂。ちょっとこっちへ」
その貂に気付いた壁が貂に声を掛け人気のないところへ連れていく。

「なんだよ。こんなところに連れて来て。オレ、腹減ってんだけど」

「山の民は明朝、山界へ帰るそうだ」
「帰る?せっかく仲間になったのに?」
「山の王とはいえど、山界全てを掌握しているわけではないらしい。大王が中華に出る刻まで勢力を強めておくということになった。お前も一緒に山へ帰れ。貂」

壁のいきなりの申し入れ。
しかし、壁の話にはまだ続きがあった。

「男のフリをして一人で生きていくなんてもうやめるんだ」

なんと、貂は女だったのだ。

河了貂の素性②

「おー。テンの奴、元気そうだぜ。くくく、いつもうるせェガキだ」
少し離れたところでバジオウらと一緒にいる信が壁と貂のやり取りに気付く。
何を言っているかまでは聞こえていないようだ。

「カツテ山界ノ覇ヲ争ッテ ”梟鳴(きゅうめい)” トイウ大勢力ト戦ッタコトガアル。激シイ戦ノ末我ラガ勝利シ梟鳴は絶エタ。アノ子ハ梟鳴ノ生キ残リダ」
バジオウおもむろに話はじめる。

「それって……。テンは隊長らの敵ってことか⁉」
信が心配そうに返す。

「モウ何年モ前ノ話ダ。端和様ハ、アノ子ヲ受ケ入レルト決メラレタ」
「⁉。……連れて行くのか?」
「ソウダ」
「………そうだな。もともと山の民だからな。…クソガキだけど面倒見てやってくれよ、隊長」
黒卑村で一人生きてきた河了貂は山の民と山に帰ることになるようだ。

バジオウが何かに気付き、タジフ、シュンメンと共にその場を後にする。
バジオウたちと入れ違いで政が現れた。

「朝には王宮を出るらしいな。お前の功績を考えると王宮の衛兵にくらいしてやれるぞ」
政が信に話しかけるが、信は戦場に出て ”将軍を目指す” とこれを断る。
信は昌文君が用意してくれる家に移るらしい。

ボロ小屋

「なななななな、なんじゃこりゃー。これのどこが家だっ。小屋だこれはーっ。あのおっさんケチりやがってー。信もこのボロ小屋に何か言ってやれ!」
信が貰った家を見て叫ぶ河了貂。
河了貂は今さら山でくらせるかと信と行動を共にすることを決意していた。

信はボロ小屋を前に大はしゃぎ。
下僕の身で何も持っていなかった信にとっては、ボロ小屋でも自分の家と土地、自分の最初の城なのだ。
信はボロ小屋を前に武功をあげて土地も家もでっかくしていくことを決意するのである。

第48話 募集

47話までで ”政蟜の反乱” 編が終わり、この48話からは新章 ”初陣 蛇甘平原” 編がスタート。
政蟜の反乱からは3か月の時が経過。
信は魏国に向かう歩兵の列に加わっていた。

その10日程前。
信と河了貂は、まるで新婚さんのような平和な日常を送っていた。信が穀物倉庫での力仕事でお金を稼ぎ、河了貂が食事の準備などの家事をこなす極々平凡な生活である。
黒卑村で過酷な日々を過ごしてきた河了貂はこの普通の生活が嬉しそうだが、信はどこか退屈そうである。
「明日すぐに戦場へ行けるわけではない。まずは身体を治すことに専念しろ。焦らずとも時は来る。準備だけは怠るなよ」
と政に言われていたのだ。

そんなある日、河了貂が立て札を見つける。
魏国に攻めるための歩兵を募集する立て札だ。

今の生活に満足している河了貂は少し寂しそうな表情を見せるが、信には 「派手にぶちかましてこいっ」と声を掛け戦場に送り出す。

左慈からうけた肩の傷も完治し信は万全の状態で念願の初陣を迎えるのである。

第49話 伍

今回の戦争は秦と魏の国境の地 ”滎陽(けいよう)” をめぐる争いである。
黄河沿いる滎陽は魏の玄関口であり、両国にとって最重要拠点の一つだ。
魏は後方の城より3軍を集結。秦も各地域の軍を集結させ、両軍共に15万強の軍を結成させる。
この大規模な戦争が信の初陣となる。

行軍中、信は同郷の尾(び)兄弟と出会う。
尾兄弟は信がいなくなった後の城戸村の話をしてくれた。

漂が殺されて数日後に漂の葬儀が行わたこと。
ケチな里典には考えられない程の大きな葬儀で、村中のみんなで泣いたそうだ。

墓参りを薦められるが行くのは二人の夢がかなってからだと答える信。
天下の大将軍になんかなれるわけないから帰ったらすぐ行けという尾と言い争いになる。

手ごわいぞ

場面変わり、秦国王都、咸陽。

「ここでしたか。先程、壁が出陣いたしました」
昌文君が政に話しかける。

「魏……か。代々、秦の東への道を閉ざしてきた国」
「四方を敵国をかまえ数百年、戦にあけくれているせいで全軍が戦い慣れしています。伝統深い戦車隊も中華で一二を争う屈強さです」
「四君(しくん)の一派の存在も大きい…。手強いぞ」

「……信も参軍しているという報告を耳にしました。激しい戦いになりそうです。命を落とさねばよいのですが…」
「あいつらしい厳しい初陣になりそうだな」

売れの残り集団

「伍(ご)をつくるっ‼ 伍長 集まれィ‼」
行軍する軍では、伍の編成が始まっていた。

伍とは、歩兵5人を1組とし常に行動を共にする5人組のことである。伍は運命共同体であり、秦軍では伍が基本単位となっていた。
そしてその伍のリーダーを伍長といった。
歩兵にとって大功をあげて帰るか死体で帰るかはこの伍の構成人員にかかっている。
もちろん信は伍など知らないので尾兄弟が教えている。

伍長が強そうな者を自分の伍に編成していき、次々に伍が編成されていくなか、信と尾兄弟には声がかからず売れ残る3人。
そうこうしているうちに、尾兄弟も屈強な伍長に声を掛けられ遂に売れ残りは信は一人になってしまう。

「くっっっだらねェ‼ あーー、くっだらねェ‼」
その場に寝転び信がふてくされていると、自分と同じく売れ残った者の存在に気付く。信よりも体が小さい。

「お前も売れ残りか。まー座れよ。残りモン同士仲良くしよーぜ」
と信が声を掛けるが無視されてしまう。
何も言わずに信の横に立つもう一人の売れ残りを何とか隣に座るよう怒鳴り散らす信。
そこに尾兄弟が戻ってくる。
先程の伍長に捨てられたのだ。

4人の売れ残りの側では伍長の売れ残り、澤圭(たくけい)が仲間を探し回っていた。
伍長は他よりは位が高いのだが、澤圭は頼りなさそうで人が集まらないのだ。
必然的に、澤圭を伍長とした売れ残り同士の5人組が誕生する。

第50話 魏国軍

野営のテント内で売れ残り同士の5人組の自己紹介が行われている。
伍長は府楼村(ふろうむら)の澤圭。
城戸村からは信と尾兄弟、兄の尾平(びへい)と弟の尾到(びとう)。
4人が自己紹介を終えたところで問題が起きる。
信を無視していたもう一人がいっこうに名乗らないのだ。
口元に手をあて、喋れないという合図をしきりに送っている。

「お前…、まさか喋れないのか…」
信が心配そうに声を掛ける。

「正解!」
全然喋れるようだ。
さっきに仕草はいったい…

「あの…、すみませんがお名前を…」
澤圭が自己紹介を促すと無口の少年が名乗り始めた。

「羌瘣(きょうかい)。嫌いなことは喋ること。以上」

「お前、何だよその態度は。しかもおかしなかっこしやがって。そのぶっといハチマキ外して顔くらいちゃんと見せやがれ」
信が突っかかるが羌瘣はそれっきり一言も喋らない。

何はともあれ、信の初陣での5人組はこの5人となりお互いが命を預けあう。

明朝。再び行軍。

「おーおー、ガキのくせにたいそうな剣もってんじゃねぇか。庶民が持てる剣じゃねぇなァ。そりゃ盗んだのか?あ?」
信が羌瘣に絡んでいる。
羌瘣は背中に高価そうな剣を背負っていた。

「ちょっと待て。お前こそ、そのただごとじゃない剣はどうした」
尾平が疑いの目で信に問う。

「なんだよ、その目は。俺はちゃんと貰ったんだよ」
「誰に?」
「政だよ」
「政ってだれだよ」
「秦の王様の政だよ」
尾平は信が剣を盗んだと確信しもう何も言わない。

「あ、信じてねぇな尾平!」
信と尾平が言い争いを始める。

6軍

たお前」
何かに気付き急に立ち止まった羌瘣に信が問う。

「な…何だこりゃ」
羌瘣の視線の先にはものすごい数の歩兵が行軍していた。

「俺たちの他にも歩兵軍がいたのか⁉」
「当然ですよ。あれが第4軍の本隊です。今から我々はあの第4軍に吸収されます」
「第4軍⁉ ってことは他にあと3つもあんなでかい軍があるのか⁉」
「あと5つです。全部で6軍ですよ」
「すっ、すげー」 
軍の大きさに度肝を抜かれる信。

星眼の黒龍

行軍が続いている。

「まずいことになりました。我々第4軍は丸城(がんじょう)に入ることになってしまいました。」
澤圭が信たちに伝える。

秦の各軍は戦の前に秦の城に入り軍を整えるのだが、第4軍は ”星眼の黒龍” と恐れられる猛将、黒剛(こくごう)が城主を務める丸城に当たってしまったというのだ。
黒龍は根っからの戦好きで、毎回最激戦地に軍を投入し死地に生を拾う戦い方をするが、特にこの戦で将軍に任命されたためいつも以上に血がたぎっているはずと皆が丸城を敬遠していたという。

将軍と聞いて張り切る信。
しかしその頃、丸城は魏軍に攻められ落城。
星眼の黒龍こと黒剛は首をはねられてしまう。

第51話 再会

全軍停止。元軍停止っ。全軍停止だ‼ 伍長集まれェい‼ その他の者はその場に待機‼」
火急を知らせる赤伝者が駆け回っている。
緊急事態のようだ。

ここで信たちは丸城の落城と黒剛将軍の討ち死にを知る。
更に城内の人間は老人女子供にいたるまで皆殺しにされたことも。
魏の指揮官は呉慶(ごけい)将軍で、戦国四君の一人 ”信陵君(しんりょうくん)” の食客頭だった人物だという。

戦国四君とは、孟嘗君(もうしょうくん)、平原君(へいげいくん)、信陵君、春申君(しゅんしんくん)の四人で、一国の王に匹敵するほどの力を持つと言われている有力者のことである。
彼らは様々な才のある者たちを食客として囲い、その数は数千人に及んだと言われていた。

「だけど入城するはずだった丸城が落とされちまって、俺たちこれからどこに向かうんスか?」
尾平が澤圭に問う。

「亜水(あすい)です。我々第4軍も第1・2軍と合流し、本軍として正面から滎陽を攻めることになってしまいました。」
「それってかなりやばいんじゃ…」
「最悪です」

本軍として最激戦地に行くことになってしまい気落ちする尾平たちをよそに、信は一人気合が入る。
「願ったりだコノヤロォ‼」

千人将

「何見てんだよ、コラ」
「あ? 何か言ったかゴラ」
あちこちで歩兵たちの小競り合いが増えてきた。
戦場が近づくと気が立っていつもこうなるという。
行軍中の死闘は罪に問われるので気を付けるよう澤圭が信たちに言うが、言っているそばから他の伍に絡まれて一触即発の状態に。
その時である。

「整列っ。整列だぁ‼。千人将の騎馬隊が通るぞォ! 全軍整列だあ‼」
千人将の騎馬隊が通るとのことで歩兵たちは整列するよう指示され事なきを得る。

騎馬隊を見たいがために最前列を確保する信たちに、澤圭はくれぐれも整列を乱さないようお願いする。
秦の騎馬隊は軍律に厳しく、以前整列中にフラついたという理由だけで両断された者がいたそうだ。しかも、その伍の者達も連帯責任でさらし首になったというのだ。
騎馬隊の将は気性が荒い者が多く歩兵たちから恐れられていたのだ。

しばらくすると騎馬隊の姿が見え始める。
その格好良さに信は興奮を抑えられないが、なんとか動かないように自分を押さえていた。
しかし、千人将を乗せた四連戦車が現れた時である。なんと信は戦車の前に歩み出てしまうのだ。
周囲の者たちは皆、信の死を覚悟した。

しかし、戦車から出てきた千人将は政蟜の乱で共に戦った壁で、2人は久しぶりの再会を笑顔で喜ぶのである。

第52話 蛇甘平原

「あのガキ一体何者だ。千人将相手にやけに慣々しかったな…」
「けっ、どうせ、昔下僕として仕えてたんだろ」
「でもタメ口だったぞ。どういうこった?」
信に絡んできた伍の連中が信が入っていった壁の天幕を見上げながら信の素性を考察している。

一方、久しぶりの再会を期した信と壁は、政蟜の乱の後処理のことや、これから戦争のことなどを話し、亜水での再会を約束しそれぞれの持ち場に戻った。

 

開戦迫る

その頃、敵将 呉慶将軍は滎陽に入城を果たし城主からの歓迎を受けていた。
しかし、呉慶は城主に告げる。
「城を守る援軍ではない。滎陽の全軍をもらいに来たのだ」と。
呉慶将軍は侵攻してくる秦軍が魏国の地を踏むことがないよう打って出るつもりのようだ。

場面変わり、秦国、亜水。
城内では、将校たちが滎陽攻略の軍議が開かれている。
信と別れ、先に亜水入りした壁もこの場にいるが千人将程度では発言権はないようだ。
その時、急な知らせが入る。

魏軍15万人が亜水を目指して進軍しているというのだ。
15万もの軍が自分たちのいる亜水に攻めてくると聞いてうろたえる将校たちをよそに、今回の魏国攻めを任されている秦国総大将、大将軍 麃公(ひょうこう)は、平地戦へ切り替え、滎陽と亜水の中間地、蛇甘平原(だかんへいげん)を決戦の地とし、一早く丘に布陣するよう指示する。
呉慶は亜水など狙っておらず、魏軍主力の戦車隊が活きる平地戦に持ち込みたいのだと麃公は考えていた。

部下たち第4軍はいまだ入城しておらず軍編成も終わっていない状況で今すぐ出発するという麃公の命令に戸惑いをみせる。
壁も平地戦で見晴らしの良い丘に布陣するための素早い対応を理解しつつも、兵も軍もまったく準備ができていない状況でのこの判断に疑問を抱いた。

戦場の空気

その頃、信が属する第4歩兵軍は蛇甘平原に向けて走らされていた。
目的地が滎陽から亜水、亜水から蛇甘平原へと2度も変わったことに、澤圭が心の準備をしておくよう注意を促す。
攻めるはずの秦が後手後手に回っている、こういうときは大勢の兵が死ぬというのだ。

5日後になっても信たちは第4歩兵軍はまだ目的地、蛇甘平原に向け走っていた。
信たちはいつの間にか先頭集団を走っている。
そろそろ蛇甘平原に着く頃だと澤圭と尾平が話しているとき、信が突然立ち止まる。
辺りの空気が急に変わったと感じたのだ。

”何だこの感じ。ムタともランカイとも違う。だが間違いねェ。すぐ目の前に何かいやがる。とんでもねェ何かが‼”
おもむろに走り出す信。
その先で信が目にしたのはもの凄い数の人たちが殺し合いを繰り広げる戦場であった。