キングダム3巻 あらすじ

キングダム3巻のあらすじ。
ネタバレ注意。

第20話 楊端和

両手を縛られた信が牢屋の格子に噛み付いている。
格子を噛み切り脱走しようとしているようだ。

そこに政が拉致されたときに、信に殴り飛ばされた大男が現れる。
大男は牢屋の前でしゃがみ込み、信たちにあっちを見ろと言わんばかりにある方向を指さし、その場を後にした。

大男の指さした場所には大量の人骨が山積みにされていた。

夜なり、今度は武装した十数人の山の民が現れる。
牢屋越しに槍で刺し殺そうとしているようだ。

刺してきたら足と縄でからめ取って暴れてやると河了貂を自分の後ろへと庇う信。
しかし、山の民が取り出したのは弓矢であった。

さすがの信も両手が縛られたうえに、至近距離からの弓矢攻撃にはどうすることもできない。
覚悟を決めたそのとき、あの大男が現れ、信たちを殺そうとしていた山の民を撃退する。

「お前…、助けてくれたのか?」
信の問いに、平地の言葉ではない言葉で何やら答える大男。
信たちには何を言っているのか理解できない。

「タジフハ王ノ命令ダカラ守ッタダケダト言ッテイル」
政を拉致したときに平地の言葉をしゃべっていた隊長みたいな男が現れて通訳してくれた。
大男の名前はタジフというらしい。
隊長はさらに信たちを襲っていた連中は平地の民に家族を殺された者たちであることも教えてくれた。

タジフはまた何事かしゃべりその場を去っていった。隊長が通訳してくれる。
「戦士タジフノ面ヲ折ッタ平地ノ少年戦士ニ敬意ヲ払ウ…」
「明日オ前タチハ我々ノ王ニ裁カレ殺サレテシマウコトガ残念ダ」

翌朝、山の王の宮殿。
遂に山の王、楊端和が姿を見せるのであった。

「第31代秦国王、嬴政(えいせい)だ」
「我が山の王、楊端和(ようたんわ)である」

玉座に座る楊端和は物々しいオーラを纏っていた。

第21話 会談

玉座の前で楊端和を守るように座っている3匹の狼が政を睨みつけている。

「秦王、嬴政。権無き少年王。弟に玉座をおわれ、頼れる臣も少なく、身一つで逃げ回っている。そして私に会いに山界に足を踏み入れた。会いに来た理由を聞かせてもらおうか」
楊端和が話出す。

「力を借りに来た」
短く成は答える。
失笑する警備兵をよそに楊端和が続ける。
「あてが外れたな秦王よ。我らはそなたを裁くために連行して来た」

「何の裁きだ」
間髪入れず政が短く答える。

「……………」
無言の楊端和。少しの沈黙後話出す。

「400年前、かの秦王、穆公(ぼくこう)と山界が盟を結んだとき、我々の祖は新しい国の広がりに至る兆しを見た。しかし、穆公去りし後、それが幻だったと気づかされた。平地に交わり住んでいた一族の面々は山への岐路についたが、それでもなお執拗な責め苦にあい、受けた惨劇は耳を疑うものばかりだ。祖霊の怨念を鎮めるために現秦王のそなたの首をはねねばならん」
「何かいうことがあるか?」

「非はこちらにある。過去の愚行、秦国の代表として心から謝罪する。だが、俺の首をはねるまでの理由にはならない」
政が答える。

「ほう、それはなぜか?」
楊端和が問う。

「穆公からの400年。さらに穆公に至るまでの1000年を超える”歴史”において、国、民族、文化、信仰、異なるものが交わるのに一滴の血も流れなかったことがあろうか。永年積み重ね合ってきた差別と侮蔑、恨みの心が消えたことがあろうか。それらを成すことがいかに至難の業かは人の史を見れば理解に易い。穆公一人の出現で数百年の軋轢が消えたと思う方が容易だ」

政の答えに楊端和の口調が変わる。
「……貴様、和を夢見て裏切られた我らの祖を愚かと申すか」

「そうではない。この問題は根深い。俺一人の首をはねて解決すると思うのは間違いだと言っている」

「フフフ……。解決にならぬから自分を殺すなと?では一族が殺されたことを流せというのか」

「復習よりも前にやるべきことは山ほどある」

「……フフ、いっぱしに賢王気取りだな、小賢しい。若王はおよそ人の痛みが分かっておらぬと見える。一族の者が…、仲間内が殺される痛み。まずはこやつらの首を眼前ではねて教えてやるわ‼」

断首台に固定された信たち3人が連れてこられる。
楊端和の号令とともに、執行人が剣を振り上げたそのとき、
「そんなことをする必要はない。俺はすでにその痛みを十分に知っている」
成が静かに口を開く。

「山の王よ。恨みや憎しみにかられて王が剣を取るのなら怨嗟(えんさ)の渦に国は滅ぶぞ。王ならば ”人を生かす” 道を拓くために剣をとるべきだ」

「…………どういう意味かな?」

「秦人、山の民と分けるからそこで摩擦が起こる。だが昔からそうなっているから、それがあたかも当然になっている。中華でもそうだ。そなた達から見れば同じ平地の民なのに永々と奪い合い、殺し合いを続けている。たしかに、まれに穆公のような列国の盟主となる王が出たが、それでも結局、一時の安定をもたらしたに過ぎない」

ここで穆公好きの信が口を挟む。
「お前にぼっこーの何が分かるってんだ‼ 一時が平和になったんならすげぇじゃねぇか‼ それ以上何ができたって言うんだ‼」

「全国境の排除!」

「………。周りをよく見てみよ。そんな話を受け入れる国が一つでもあると思うか?」
それまで黙って成の話に耳を傾けていた楊端和が口を開く。

「できないなら力づくでやるまでだ。戦国の世らしくな」

「………。人を生かす道とは正反対に聞こえるな」

「否。今まで五百年の争乱が続いたならば、あと五百年続くやも知れん。俺が剣をとるのは、これから五百年の争乱の犠牲をなくすためだ」

「ちょっと待て。お前ら一体何の話をしてんだっ」
信は話についていけない。

「俺の目指すところの話だ。玉座は ”俺の路” の第一歩にすぎぬ」
「俺は中華を統一する最初の王になる。その協力を得に山の王に会いに来た」

第22話 盟

”中華を統一する”
という政の言葉をすぐには理解できない信たち。
壁はそんなことできるわけがないと政に具申する。

中華を統一すれば国家間の争いは無くなり、民はかつてない国の広がりを見ることになるという政の言葉を聞いて、楊端和は自分がかつて描いていた ”世界を広げたい” という想いを思い出していた。

楊端和の回想。
まだ幼い楊端和が2人の長老に問う。

「なぜ、秦を獲らんんのだ?」

秦を獲るには山界の力を強めねばならないという長老たちの返答に、ならば和を求めるよう求める楊端和。
憎き秦と和などと、めったなことを口にしてはいけない。祖の無念、我らの怨念を晴らすのは端和様であると皆が期待しているという長老たち言葉に楊端和が返す。

「我が年を重ねるごとに山界の防壁も幾重にも屈強になっていく。すると国の狭さを感じる。”戦” でも ”和” でも何でもいい。我はただ…、世界を広げたいんだ」

回想終わり。

そこに楊端和の回想で出てきた長老2人が登場。
「今こそ一族の積年の恨みを晴らすとき。余計な問答は必要ありません」
と部下に山の民の言葉で何やら指示する。

部下の一人が信の首をはねようと剣を振り上げるが、斬首台からいつの間にか抜け出していた信が返り討ちにする。
こんなこともあろうかと縄抜けの術もばっちり漂と特訓済みだぜ‼ と得意気の信だが、山の民は臨戦態勢に。

一触即発の雰囲気のなか楊端和が信に問う。
「フフフ。バジオウの報告にあった通りだ。面白い少年だなさて、次はどうする?」

「別にどうもしねぇよ。お前たちが力を貸してくれないならとっとと下山して他をあたるだけだ。………別に剣を奪って暴れてもいいけどよ。なんか、あんま戦いたくねぇ奴らもいるし…。ジィさん人質にして下山すっかなぁ⁉」
信はバジオウ、タジフの2人に親近感を持っているようだ。

さらに信が続ける。
「やい、大将仮面のオッサンよ‼ さっきから難しい話ばっかしてっけどさ、簡単に言うとこいつ今困ってんだよ! 人助けと思って力貸してくれよ! なっ?」

「下等なサルが調子になるな!! 貴様らはここで祖の無念の生贄に八つ裂きに…」
長老の一人が口を挟むが、それを遮るように信は続ける。

「無念無念ってうっせぇんだよ!! だいたい一番の無念は夢見てたものが幻に終わったってことだろうが‼ もしお前らが本気で死んだ奴らのことを想うのなら奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!!」

信の言葉で場の空気に変化が起きる。
言葉は悪いが信の飾らない言葉はその場にいた者の心に響いた。

ここで政が改めて楊端和に嘆願する。
「山の王、楊端和よ。俺は見ての通り今は何の力もない弱王だ。だが中華統一は空虚な世迷い事ではない。確かな俺の ”路” だ。俺と共に行かれば祖霊が求めた以上に広大な国の広がりを見るぞ。四百年前の秦と山界の盟を復活させ、俺に力を貸してくれ!!」

楊端和がゆっくりと仮面をとる。
仮面の下から現れた楊端和の素顔に驚く信たち。
信と壁にいたっては少し顔が赤い。
楊端和はなんと女性だったのである。

仮面をとった楊端和は高らかに秦と盟を結ぶことを宣言する。
「皆の者よく聞け。山界の王、楊端和は秦王嬴政とかつてない強固な盟を結ぶ!! その盟のため、これより不当に追われた秦王の玉座を奪還しにゆく。周囲の山々からも兵を集めよ。全軍死闘の覚悟で出陣準備!! 目指すは秦国、王都咸陽なり!!」

第23話 太子の座

木の実を食べているリスが何かに気付き振り向く。
すると地響きとともに馬の大群が山を駆け下りてきた。
馬上には政や楊端和、バジオウやタジフのほかたくさんの山の民たちの姿がある。
信は馬に乗れないらしい。振り落とされないよう手綱にしがみついている信を見て、タジフが一言。バジオウが通訳する。
「スゴイ馬術ダトタジフガ言ッテル」

場面変わり王宮。
捉えられた昌文君の配下たちを人間離れした大男が虐殺している。
その様子を政蟜(せいきょう)が眺めている。

自分は反乱など起こしてはいない。5年前のあるべき姿に戻しただけだと言う政蟜。
5年前になにがあったのか。政蟜の回想が始まる。

政蟜の回想シーン
宮廷を散歩している政蟜。たくさんの取り巻きが政蟜のあとをゾロゾロと歩いている。
政蟜は我がままの限りを尽くして生活していた。
そこに急報が届く。
” 太子は政蟜様に非ず。嬴政様とのことだ ”

次期王が政蟜ではなく嬴政と知って態度が急変する取り巻きたち。政蟜の元を離れて行く。
政蟜は側近らしき男に嬴政とは何者なのか問う。

嬴政とは、腹違いの兄であること、舞妓という身分のためこれまで隠されていたが嬴政の母親が正妃となり、その子の嬴政を太子にすることが内定したと説明を受けるが納得がいかない政蟜。

更に、正妃の座を奪われた母親が心を病んでしまったことを知った政蟜は、そばで母親の陰口を叩いていた侍女2人を刺殺してしまう。

王宮はそれに相応しい身分の者が治めるべきだというのが政蟜が考えるあるべき姿である。舞妓の母親を持つ者が王になどなってはならないのだ。

第24話 騎兵の夢

馬の扱いが様になってきている信を見て驚く河了貂と壁。
信は趙(ちょう)の ”武霊王” が考案した騎馬隊の出現で戦場が劇的に変わったことを漂から聞き、漂と2人、馬に跨る日を待ち焦がれていたことを壁に話す。

場面変わり王宮。
玉座の上で頬杖をつき寝そべっている政蟜が肆氏(シシ)にランカイの玩具を要求する。
ランカイとは昌文君の配下たちを虐殺していた怪力の大男のことで、玩具とは昌文君の配下たちのことのようだ。

昌文君配下の捕虜はもういない事を伝う肆氏に、ならば昌文君の領土の住民を連れて来るよう指示する政蟜。
肆氏はすでに昌文君の身内を捕えようと動いたが、昌文君の領土の現領主、王騎将軍に邪魔されたと報告する。

すると今度は嬴政の首に話が及び、早く嬴政の首を持ってこないと貴様らの首が危ういぞと凄む。
そこに竭(けつ)丞相が現れる。
竭氏は大王の首を持ってくることを約束するが、昌文君亡き今は大王の首などよりも重要なことがあると進言する。”呂氏との対決に敗れればあの商人(呂氏のこと)が王になってしまう” と。
竭氏に準備は進んでいるのかという問うと、自分の目で確かめられてはと案内された先で見た軍の姿を見て不気味な笑みを見せる政蟜。

再び場面が変わり、今度は穆公の避暑地。
穆公の避暑地には昌文君一派の残党たちが続々と集まってきていた。

昌文君は一人、崖の上で山の様子を伺っている。
配下たちの言動より、避暑地に戻ってからずっと、政たちが戻るのをここで待っているようである。
そして山がうごめきはじめる。

第25話 3千対8万

信たちが昌文君たちの待つ穆公の避暑地に到着する。政を奪還し山の民を連れてきた信を昌文君の配下たちが労う。

一方、避暑地の屋敷内では作戦会議が始められようとしていた。
メンバーは政、昌文君、壁、楊端和の4人。壁は隣に座る端和を横目に顔を赤くしている。

 

「作戦会議は終わったか⁉」
信、河了貂、バジオウ、タジフたちが入ってくる。
顔を赤くしている壁は信たちにからかわれる。
タジフの言葉を訳すバジオウ。
「王ノ好ミノ顔デハナイト思ウト言ッテイル」

「とっとと出発しようぜ‼ 今すげぇ勢いあるからよ! 戦は勢いだろ⁉ 細かい作戦はいいからダァーと行こうぜ、ダァーと‼」
はやる気持ちをおさえられない信。

「確かに信の言う通り、”勢い” は戦に勝利する要素の一つだ。だが、それだけで勝てるのはせいぜい小団隊の野戦程度。我らはこれから秦王都に攻め込むのだ。敵の軍容を知り城壁を越える策が必要となる。4人共、会議に加わりたいならそこに座って静かにしていなさい。」
楊端和が静かに信を諭す。
おとなしくその場に正座する4人。

昌文君が王都咸陽の様子を話だす。
咸陽では自分が死んでいるという誤報により、竭氏たちの注目は大王から呂氏に移り、8万の大軍が集結しているようだと報告する。

山の民の軍勢はせいぜい3千。8万という数字を聞いて驚きを隠せない信だが、政と昌文君は”悪くない”と考えていた。策を施すにはうってつけの数字らしい。そのためにある物を作る必要があるようだ。

夜が更け明朝。
屋敷前では河了貂たちが信の作ったお面を見て大笑いしている。
昌文君は信たちにお面を作らせていたようだ。

そこに成が寄ってくる。
心の準備は出来ているかと信の胸を叩く成。
いよいよ咸陽に出発することになる。

第26話 王都咸陽

「ね~ね~、壁」
河了貂に呼ばれ振り向くと、そこには間抜けな仮面を付けた信の姿。
爆笑する壁。
咸陽までの道中、何度もこの行為が繰り返されているらしい。

そして遂に咸陽に到着する。

咸陽の大きさに愕然とする信。
「どうやって、あんなでかいもん攻めるんだよォ‼ 」

今回の反乱のことは王宮の外には公にされていないため、王宮を叩けばよいと政が返す。
しかし、その王宮は咸陽の中心に位置し、その間には何重もの城壁や貴士族・庶民の住居が配置されている。いったいどうやって王宮まで行くのか疑問を口にする信。

「だから ”策” を講じると言っておろうが」
そこに昌文君が現れる。

場面変わり王宮。
竭氏城壁上より自軍の軍勢を眺めている。その横には肆氏の姿も。

「8万か……」
竭氏が呟き肆氏に突然裏拳をかます。悶絶する肆氏。
竭氏は8万の軍勢では不満のようだ。

竭氏は玉璽(ぎょくじ // 王の印鑑のこと)を奪い、40万のんを興す算段であったが、玉璽は見つからず集まった兵は呂軍20万の半分にも満たない8万であったため焦っていたのだ。
早急にあと10万の兵を興すよう肆氏に指示する。

逆に竭氏の焦りを利用するのが政たちの ”策” である。援軍と思わせ王宮まで招き入れられれば無傷で城壁を越えることが出来る。

再び場面変わり、甲冑を脱ぎ捨て山民族の姿に扮する昌文君の配下たち。
信や政も仮面を付け山民族に扮し、咸陽の城門前に立つ。

突然現れた山民族の群れに慌てふためく竭陣営。
大きな戦力になるという者もいれば、良い軍事演習になるという者もおり、山民族を迎え入れるかどうか意見はわかれる。

城門前では門が開くのを信たちが待っている。
いきなり8万の大軍が踊り出てくるんじゃないかと信は身構えているが、政は ”策” が上手くいくと確信してるようだ。

そして静かに門が開き始める。

第27話 開門

ゆっくりと開く城門。
いつ乱戦になっても良いように信たちは臨戦態勢だ。
しかし、開かれた門の先には貴族の姿。
政の ”策” は成功し、無傷で咸陽の中に入ることに成功する。

その頃、王宮内ではランカイを従え政蟜が竭氏に山民族を迎え入れたことを咎めていた。
竭氏は呂軍と山民族が戦う様を眺めるのも一興ではないかと政蟜をなだめる。

一方の信たちは順調に城門をくぐり王宮に向かっていた。
城門の多さ、町の大きさに改めて驚く信と河了貂。
田舎者の2人にとってはすべてが規格外のようだ。

壁はいつもの咸陽とは違う微妙な緊張咸が漂っていることに気付く。
その原因は捕吏(ほり // 罪人を捕まえる役人)であった。
政蟜が王位に就くのはあくまで大王急死よる正統なもの。反乱による略奪であってはならないため、よからぬ噂を封じ込める必要があるのだ。
今、王宮について語った者は即座に捕吏に捕まり二度と家には戻れないらしい。

山民族の入城の様子を肆氏が部下の左慈(さじ)と魏興(ぎこう)と共に眺めている。
たかが3千の兵を手に入れるために王宮まで招くとは丞相はあせりすぎではないかと魏興が疑問を口にするが、山界の覇者、楊端和と盟を結べば山界の数十万の山の民を味方にできることを見通しての判断だろうと竭氏の判断を支持する肆氏。ただ、数百年もの間絶縁していたのに、なぜ今、このタイミングで山民族が盟を申し出てきたのかに違和感を覚えていた。
入城する山民族を見つめ思案する肆氏は何かに気付く。

信たちは王宮前の最後の城壁に辿り着く。
感慨深げに王宮を見つめる政に信が声を掛ける。

「よォ、いよいよだな。」
政は反応しない。

「どうしたよ。怖じ気付いたかお前?」
少し間を置き、政が話出す。

「王宮の中で漂はお前の話ばかりしていた。」
以外な言葉に驚く信。政が続ける。

「まるで自分の宝物を見せるかのように目を光らせてな。漂を思い出すとその光景ばかりが目に浮かぶ。政蟜の反乱がなければ漂にもお前にも会うことはなかったわけだが、やはり漂が死ぬこともなかった。反乱の火をつけた政蟜とその指揮をとる竭氏はこの中にいる。」
「決着の刻だ信‼ 間違っても死ぬなよ」

高笑いっして信が答える。
「天下の大将軍への第一歩だ! ンなとこでコケるかよ‼」

第28話 先陣

王宮内に入れるのは王と使者50人までとのことで、王宮内の知識のある昌文君の配下たちで10名、山の民で40名を選び王宮に向かう。貂はここで待たせることにした。
楊端和の ”血祭りだ” という号令で王宮内に入っていく。

その頃、竭氏も楊端和を出迎えるため王宮内を移動していた。
丞相自ら出迎える必要はないのではないかという従者に、
「野人などと侮るな。山界は平地が思っている以上に進んでおるぞ。自分は山界の一部と私的に交易を行っている。今回の下山は知らなかったが、山界の王 ”楊端和” が王となり山界の力が強まっている事は聞いている。呂氏との決戦の前に何としても盟をなし山界の力を手にいれなければならん。」
と自分が出迎える重要性を説く。

場面戻り、王宮内を進む信たち。
タジフが信を呼び止める。
タジフの指さす先には河了貂の姿が。
待っていろと言われた河了貂だが、こっそりと着いてきていた。

「今から何が起こるのかわかっているのか? とっとと戻れ」
と詰め寄る信に河了貂が言う。
「外の連中の中にゃ居場所ねぇもん。どうやらオレはあいつらの仲間じゃないみたいだ。だったらお前らと…」
河了貂の気持ちを察したか、死んでも知らねぇぞと返す信。

信たちは順調に王宮内を進んでいる。
「おっさん(昌文君)の作戦大成功だぜ。これじゃ何もせずに竭と弟のところまで行けるんじゃねェか⁉」
信の言葉にバジオウが返す。
「残念ダガソウハイカナイ。王宮ノ半バホドマデ行クト ”朱亀(しゅき)” トイウ門ガアル。ソコデ全員武装ヲ解ケトノコトダ」
バジオウが答える。
「何ィ⁉ 武器を取り上げられたら戦えねェじゃねェかよ」
信が不満を漏らす。
「その通りだ。だからそこが開戦の場所だ!」
政の言葉に開戦が間近に迫っていることを改めて理解し顔付きが変わる信。

朱亀の門には武装した100人以上もの兵が待ち構えていた。
隊長らしき男が武装を解くよう告げるが構わず前進する山の民たち。
構わず近付いてくる山の民たちに兵達も異変に気付き叫ぶ。
「なんじゃ貴様ら!!」

”俺がやる!” と山の民の1人が前に出るが、
”ダメだ。この戦の第一刃にふさわしいのはただ一人だ” とバジオウがこれを制止。
その瞬間、成が隊長らしき男を斬り伏せる。

第29話 電光石火

「何の真似じゃ猿共ォォ‼ 殺せェェェ‼」
竭氏は怒りで顔中に血管が浮き出ている。
楊端和も山界の言葉で何か叫ぶ。
激しい乱戦が始まった。

山の民たちが門の破壊を試みるが、門はびくともしない。
朱亀の門は城壁や門を破壊する兵器である衝車(しょうしゃ)や投石でしか破壊できないほど頑丈に作られており、壁を越えて内側から開けるしか道はないが、その壁も絶対に手の届かない高さで建てられており、山の民でも届かない。

「壁際に拠点をつくれっ‼ 人梯子を作って壁を越えよ‼」
昌文君が指示を飛ばすが、相手もそれは重々承知。なかなか拠点を作らせてもらえず、門を越える糸口が見えない。

「ダメだ!失敗だよ信。門を抜けられないんじゃ、こんな所で切り合ってても意味がないよっ」
貂が叫ぶが、信は壁に向かい走り出す。

「無茶だ、戻れ、信っ。山の民でも届かない壁だぞォ‼」
壁が叫ぶ。

壁際では拠点を作ろうとする山の民と敵兵が激しくぶつかり合っている。
信はその山の民の背中を踏み台に飛び上がり壁を駆け上がる。
懸命に手を伸ばす信。

かろうじて指先が壁上に届き、壁を登ることに成功するのであった。

第30話 対面

門を護ろうと奥から兵が駆け寄ってくる。
しかし、信は素早く門兵を倒し開門。
山の民たちがなだれ込んでくる。

慌てて馬車に乗り込み、逃げる竭氏。
その姿を捉えた政が馬車を狙うように指示をだす。

異変に気付いたのか宮殿内でランカイが突然振り向き外を見つめる。政蟜はランカイの行動に疑問を持つも、襲撃には気づかない。

外では山の民が竭氏の乗る馬車に迫っていた。
竭氏は馬車に乗っていた従者を投げ飛ばし追手の妨害をはかる。

しかし、どこから奪ったのか馬に乗った山の民が現れ、竭氏を追い詰めることに成功する。
竭氏の最後かと思われたが、山の民は突然飛んできた無数の矢に撃たれ馬もろとも倒れてしまう。
矢が飛んできた方向には、武装した肆氏の軍勢があった。

肆氏は山の民の入城の際に、山の民が着ていた蓑笠(みのかさ)の下に光りものを着込んでいる連中が混ざっていることに気付き、山の民の下山は平地の者が促したものだと考えていた。山の王を動かせるような人物は政以外考えられず、山の民は欺くと見破り待ち構えていたのだ。

「姿を現しなされい‼ 大王嬴政‼」
肆氏が叫ぶ。

成はもはや姿を隠す必要はないと判断。
自分が肆氏の軍勢を引き付け、信や壁、バジオウらからなる別働隊で宮殿にいる政蟜を討つ作戦を立てる。

「束の間の栄華楽しんだか丞相⁉ もう十分だな?」仮面と蓑笠を外し、政は自らの姿を晒す。

「ホォォ。 健気な大王ではありませんか。面白くなってきましたねェ。ンフフフフ」
この様子を王騎将軍が眺めていた。