キングダム2巻 あらすじ

2020-04-15

キングダム2巻のあらすじ。
ネタバレ注意。

第9話 山の民

合流地である建物に成の腹心、昌文君の姿はない。3人は昌文君が到着するまで休んで待つことにする。

日が暮れても昌文君は現れない。
そんな中、河了貂が屋敷について違和感を口にする。

「400年前の王の避暑地だったというこの屋敷。王の死後、忘れられた場所だと言っていたけど、誰かが大切に手入れしないと、こんな綺麗に残るはずないよね。」
と。

「400年前の秦王”穆公(ぼくこう)”はまれに見る”名君”だった」
と成が話始める。

「ある日、穆公の軍馬が山に住む野人達に殺され食われたが、穆公は野人達に罰を与えることもなく馬肉に合ういい酒を振舞た。」「穆公は誰よりも差別なく人を愛し、敵国の奴隷にさえ尊敬の念を表す王で、人を愛でるのに秦人も野人も区別のない穆公という王が、”山の民”の心を深くうち、山の世界の王と手を取り合い盟を結んだ」と。

山の民?
信と河了貂。
成は話を続ける。

「秦は中華で最も西に位置するが、その更に西には決して平地の民と交わることのない深き山々の世界、”山の民の世界”が広がっている。中華では一里の領土を争って数十万の人間が死んでいるとき、穆公は西に百里の地を開いたのだ。」

「でも今は秦人と山民族が交流してるなんて全然聞かないよ」
と河了貂。河了貂は1巻5話(異母弟)で自分は山民族だと告白している。

「さっき言ったように穆公はまれにみる名君だった。結局、山の民を差別なく愛していたのは穆公一人で、穆公の死後、秦側から盟は失われ、山の民との交流は途絶えてしまった。ここはもう王家が史で学ぶだけの場所だ。」
政が答える。

「じゃ、じゃあ誰がこの建物を」

「山の民だよ。彼らは400年たった今も穆公のことを忘れていない。穆公との思いでの場所を神聖な地として崇め、時々、深山から降りてきてはここをまもっているんだ。400年間ずっと」

ここまで話を聞いて河了貂は感動し泣き出してしまう。

場面変わり、翌朝、屋敷前の庭。
信は剣を振って鍛錬中。
河了貂は400年間も山の民がまもり続けてきたという屋敷や庭を眺めながら感傷に浸っている。

「でもお前良かったな。ここにいりゃ、そのうち仲間に会えるんじゃねぇか?」
「………。そうだな。」
「それにしても来ねーな。昌文君のオッサン。もうくたばってんじゃねぇのか⁉」

夜になりまた朝を迎える。
河了貂が庭で木の実をとりながら信に言われたことを思い出している。
「仲間か‥‥」
物心ついた時から秦で育ち、黒卑村で一人生きてきた河了貂は仲間に憧れがあるようだ。

仲間のこと、これからの生活のこと、あれこれ考えながら木の実をとる河了貂の後ろに人影が忍び寄る。

人影は吹矢を構えたムタであった。

第10話 油断

ムタの気配に気付いたのか、寝ていた信が飛び起きる。

河了貂はムタには気付いていない。
ムタが吹矢を吹こうとしたとき、何かがムタ目掛けて飛んでくる。
とっさに避けるムタ。
ムタが見上げた先には信が立っていた。

睨み合う信とムタ。

ムタは信の実力を見抜き、朱凶を斬ったのが信であることを言いあてるが、信は人間離れしている言われるムタの実力を見誤り軽口を叩き油断する。しかし、ムタが吹矢を構えると体がこわばる。一発で像が死ぬという毒矢に体が自然と反応したのだ。

信の武の才能を認めるムタ。
ムタは吹矢は使わないという。

吹矢を卑怯だと馬鹿にしムタの強さを朱凶は認めなかった。その朱凶を倒した信を吹矢なしでズタズタにして、ムタの圧倒的強さを証明するのだと鉞(まさかり)で信に襲いかかる。

ムタの物凄い殺気とスピード。
なんとか初太刀をかわし反撃するた信。

しかし、次の瞬間、背後をとられ頭部付近に一撃を食らってしまう。

第11話 不退転

ムタの一撃を食らったかに思えたが、かろうじて致命傷は避けたようで、すぐさま反撃に出る信。ムタに手傷を負わせる。

ここでムタが成の存在に気付く。
「標的の首が三つそろっただべな」
と呟き、信と河了貂も成の存在を確認。

河了貂が政に加勢を頼む。
「手が必要か?」と政。
「なわけねェだろ」と即答する信。

ムタの強さを認めながらも、
「こんなところで負けるようじゃ、この先いくつ命があってもたりないぞ」
と成は信に発破をかける。

ムタは自分の強さが理解されていないことに怒り、殺気がみるみる上昇。再び信に襲いかかる。

ムタの怒涛の攻撃をなんとか凌いでいた信だが、強烈な一撃が横っ腹に炸裂しまう。

しかし、この攻撃も何とか剣で防いでいた。

戦況を見守っている政と河了貂。
「あれ?なんか変んだ、今日の信。キレがないっていうか……、朱凶のときより小さく見える」
と河了貂が口にする。
政も何か感じているようだが黙っている。

信を圧倒していはいるが、なかなか致命傷を与えられないことに苛立ちをみせるムタ。
「いい加減、面倒臭くなってきたべ。死ねっ」
と、とどめを刺そうと襲い掛かる。

「退(さ)がるな信!!」
政が大声をあげる。
「不退(ふたい)こそがお前の武器だぞ!!」

退がる⁉
俺が⁉

ビビッてたってのか俺が。
分かってら!!!
信も大きく剣を振りかぶりムタに切りかかる。

両者攻撃は相打ちに終わるが、信の動きは先程迄より明らかに良くなった。
「ムタの殺気の呪縛から解放されたな。これからが本当の勝負だ」
と政。

場面が変わり王宮。
竭軍参謀の肆氏が王騎将軍に昌文君を討ったときの状況を確認している。王騎将軍から届けられた昌文君の首の損傷が酷く、昌文君の首かどうか確認出来ないのだ。

「自分と戦ったらたいていそういうメチャクチャな首になるでしょう。嘘だと思うならその辺の誰かで試しますか?」
と王騎将軍。

「………。一つお伺いしてもよろしいか」
「王騎将軍は今、何を望んでいますか?」
と話題を変える肆氏。

「血沸き肉踊る世界!」
冷たい目で言い放つ王騎将軍に背筋が凍る肆氏一派。

第12話 忠臣

政たちを追っている軍がムタが残していた目印を発見するところから始まる。
成蟜(せいきょう)の放った軍が政たちにいよいよ迫っているようだ。

だが、その軍の隊長が投槍で倒れてしまう。
投槍が飛んで来た方には何者かが立っていた。

場面変わり、信とムタの戦い。
先程とは変わって、信がムタ相手に互角以上の戦いを見せている。

「ねー、政。殺気の呪縛って何?」
「どうして信は急に強くなったの⁉」
河了貂が政に問う。

信はそこらの武人には負けない剣技を持っているが、培われていないものが一つある。
自分に向けられた殺気をはね返す精神力だ。だが、信は殺気に押されてさがっていたことに気づき”前に出た”。
あの越人も強いが……、ここからの信も相当やるぞ。
と政が解説。

どんだけ血を流しても気が折れないどころか前に出る信。
どんどん早く、どんどん鋭くなってくる信の剣にムタが脅威を感じ始めたころ、ついに信の剣がムタを捉えるのだった。

胸から血を吹き出し倒れこむムタ。
しかし、信もフラフラで立っているのがやっとである。

河了貂が傷の手当をしようと信に駆け寄ろうとしたとき、ムタが突然起き上がる。
その手には必殺の吹矢が。

「王様の命だけでももらっていくべ‼」
と政に吹矢を向ける。

「逃げろ、政!!」
信が叫ぶ。

絶対絶命かと思われたが、この場面で昌文君一派が到着。
「我が王に何の真似だ、貴様」
とムタは昌文君に切られてしまう。

漂の死に関係した昌文君の姿を目の当たりにし、昌文君に詰め寄る信。
「漂は死んだぞ」
と昌文君を睨むが、信のことなど意にも介さず信の横をすり抜ける。

怒りで血走っている信の目が昌文君を姿を追う。
昌文君は濡れるのも気にせず池の中を一直線で成のもとに歩み寄ると、ひざまずき拱手。
部下たちも昌文君に倣う。

「脱出の手立ては万全と言っておきながらこの有様。全ての責任はこの愚臣に依るところであります。仰せとあらば今すぐこの岩で頭を砕いて果てまする。しかし……。しかし、まずは何よりも……。よくぞご無事で!!」

涙ながらに政が無事であったことを喜ぶ昌文君の姿を目の当たりにした信。
怒りは消え去り、何か別の感情が湧き出ているような表情を見せる。

第13話 熱き合戦

河了貂が昌文君一派に食事を配っている。
昌文君の部下たちは傷だらけで皆ボロボロだの姿をしていた。

成が昌文君に今回の脱出劇が失敗した理由を問う。
昌文君は城外までの脱出は首尾よく進んだが、城外で思わぬ敵、王騎将軍の待ち伏せにあったと答える。
待ち伏せしていた王騎将軍の軍と合戦になり、自分は不覚にも王騎将軍の一撃を受け崖から転落。戦場を離脱してしまったと。

ここまで黙って聞いていた信だが、ここで信が口を挟む。
「ちょっと待てよ。漂はその後どうなったんだよ!!?」
と。

成の許しを貰い、最後まで漂のそばにいたという壁(へき)がその後の出来事を話始める。

第14話 将軍への道

前話からの脱出劇の続き。
壁の回想。昌文君が王騎将軍の一撃を受け崖から落ちていく。

御車も王騎軍に囲まれ、壁は脱出劇の失敗、全滅を覚悟したとき、

「あきらめるな‼ 隊列を組み直せ‼ 密集して突破をはかるぞ‼」
御車から飛び降りた漂が王騎兵から奪った馬上で叫ぶ。

漂の一声で絶望しかけた昌文君一派に再び闘争の火が灯った。
王騎軍を前にして全くひるむことなく我ら率いている姿は下僕の少年ではなく、将であったと壁が語る。

なんとか王騎軍の追撃を突破できそうになったとき、隊を二分し昌文君を助けに向かわせるよう、壁に指示をだすが、新たにものすごい数の敵が現れてしまう。

「そう簡単にはいかないみたいだな」
「信…。俺に力を‼」
漂は突然、丘上の敵めがけて単騎で突進する。

そのおかげで敵の追撃が弱まった壁たちは王騎軍から逃げきることに成功した。


「おい政。聞きたいことがある」
壁の話を黙って聞いていた信が口を開く。
信の無礼に動揺する昌文君一派。

「さわぐな。そいつの無礼は許してある。それで何だ?」
と政。

「この先お前の下で剣をふるい、無事王宮に帰れたとしたら、お前は俺をどうしてくれるんだ?」
「やっぱ王様だから望みは何でもかなえてくれるのか?」
「俺の望みは将軍になることだから、俺を将軍にしてくれたりするのか?」
と信が問う。

「どうしたんだ急に?」
と政。

「やっぱり漂はすげぇ。漂を英雄のように語っている皆を見て改めてそう思った」
「あいつは、いつも何をすべきか知っていた。手に入れるために何をすべきかを。」
「だけど俺は何も知らない。あいつが全部知っていたから、あいつについて行けばいいと思っていた。だけどもう漂はいない」
「だから教えてくれ。俺はどうしたら将軍になれるんだ?」

真剣な信の目を見つめ政が話始める。
「貴士族が生まれの良さだけで将軍を務める時代は終わった。今この国は実力至上主義の体をなしている。戦場に出て他に負けぬ戦果をあげ続ければ階級が上がっていき将軍に行き着く仕組みだ」

嬉しそうな顔をする信だが、政の話には続きがあった。
「だが今のお前にその道は存在しない」
「軍とは主に貴士族である正規兵と、一般庶民から徴収した徴収兵から構成される。しかし、今のお前は正規兵にも徴収兵にもなれないのだ」

驚きを隠せない信を見て昌文君が話出す。
「本当に何も知らんのだなお前は」
「徴兵されるのは戸籍登録されている家、しかもある水準以上の財をもつ家からだけだ」
「住む家さえ持たない下僕の身のお前は武功どころか戦場へ行くことすらできないのだ」

愕然とする信を壁が慰める。
「信、そうくじけるな。将軍なんて貴士族の者でもそう簡単に目指せる代物じゃない」
「ましてや下僕の君がなろうなんて夢のまた夢…」

落ち込んでいるように見える信。
だが、意外なことを口にする。
「………」
「…‥…そうか…。…わかった……」
「じゃあ、政が玉座を取り戻した暁には、俺は土地をもらって家を建ててもらって財をもらえばいいんだな‼」

昌文君一派が愕然とする中、
「‥‥‥そういうことだ」
と政が短く答える。

第15話 呂丞相

落ちていたムタの吹矢を拾う河了貂。
非力な自分にはうってつけの武器だと、矢を求めムタの死体を探す。

ムタの死体を見つけ、矢を探すためにムタの体を調べていると
「そこじゃないだべ」
とムタが突然話出す。
なんとムタはまだ死んでいなかったのだ。

ムタの生命力は脅威だが、自分はもうすぐ死ぬからそっとしておいてほしいと河了貂に頼むムタ。
河了貂はそっとしておいてやる代わりに、毒矢を要求する。
ムタは毒矢は危ないからとしびれ矢をくれた。
そして河了貂に一つ忠告する。
”昌文君しか味方のいない政について行ってもいいことはない”と。

今は昌文君しかいないが本当は呂氏(りょし)という強力な味方がいるみたいだと河了貂が返すが、ムタはそれが大きな間違いだべと、味方の存在を否定する。

場面変わり、避暑地屋敷内。
信、政、昌文君、壁の4人が話している。

王騎軍との一戦で壊滅状態の軍は、軍と呼べるほどの力を残していない。
王宮に謀反人共をのさばらせておくことはくやまれるが、ここは我慢して魏(ぎ)に遠征中の呂
丞相の帰国を待つのが上策だと壁。

それだと呂軍が反乱を鎮めてしまい自分が手柄をあげられないと怒る信。
それにいつ戻るか分からない呂軍なんて待ってられないという信の追い打ちに、もうすぐ20万の軍勢が助けに来てくれると壁が答える。
昌文君たちは王都の変を告げる早馬を何頭も魏に送っていたのだ。

20万という数字を聞いて青くなっている信。
そこに血相を変えた河了貂がやってくる。
「政‼ 政が殺されるまで呂軍は戻って来ないって本当なのか⁉」

状況の理解が出来ない表情の信と壁に対し、政と昌文君は表情を崩さない。
呂軍が来ないことを理解していたようである。

その頃、魏の少梁(しょうりょう)の呂氏のもとに、竭氏の反乱を伝える伝者が現れていた。しかし呂氏は、”我々の包囲を逃れたい魏の策謀である”と伝者の首をはねるよう指示をするのである。

避暑地屋敷内に場面は戻る。
竭氏の反乱を知っても呂氏が戻って来ないことを聞かされた壁が、大王を失って最も困るのは呂氏なのでは?と昌文君に興奮して詰め寄よる。
「壁。お前はまだ呂丞相の本当の恐ろしさが分かっておらぬ」
と昌文君。政が続ける。
「呂氏は俺が殺され成蟜が王に即位するときを待っている。そのとき呂氏は成蟜と竭氏の非道を高らかに叫び、堂々と王都咸陽(かんよう)に攻め入る」
「戦場となった咸陽では王族が戦火に巻き込まれて、皆、命を落とすかもしれない。王族が全滅したとき、国民は次の王に誰をおし上げると思う?」

「……………」
「…‥呂氏…」
青ざめた顔で壁が呟く。
信は興奮して政に詰め寄る。
「何だよそりゃ。呂氏はお前の後楯(うしろだて)じゃなかったのか?」
「これじゃお前…、王宮には敵しかいねぇじゃねぇかよ!!」

「だから言ったろ。凶刃の野をゆく薄弱の王だと」
政が返す。
信は政の置かれている状況を理解し戸惑うが、すぐに切り替え昌文君に何か手はないのか詰め寄る。

昌文君は自分たちの力では王都に近づくことさえできず、今は呂竭の動静を見守り再帰の刻を見計らうしかないと言うが、政がこれを否定。

自分の生死に関わらず竭氏は呂氏との全面戦争の準備が整いしだい成蟜を無理矢理、王位に就かせるだろう。呂竭の戦いは国を二分するほど大きなものになる。内戦を起こさせる前に自分は王座に就き王都を正常に戻さねばならない。だから一日でも早く王都に帰る。というのが政の主張であった。

王都を奪還するには軍勢に頼らなければならないが、呂竭に与せず自分たちを助ける軍勢などありはしないから、不可能だと悔しそうな表情を浮かべる昌文君。
しかし、居合わせた河了貂を見て何かに気づき呟く。
「あった。あったぞ。1つだけ……。呂竭に与せぬ大軍勢が…‥」

「ここに来たときから俺もそれを考えていた」
「し…しかし、彼らとは400年も前に…」
「可能性は低のが会いに行くしかない。山の王に!!」
政と昌文君が話をまったく理解できない信と河了貂が政たちを見つめている。

第16話 馬酒兵三百

疲れきった表情で山を登る昌文君一派。
昌文君を含め、かなりの人数が遅れているようだ。
それを見て、政が小休止を告げる。

休憩にイラつく信が
「こんなチンタラしてたら成蟜が即位しちまうぜ」
「行楽旅行じゃねぇんだぞ」
と言い放ち、昌文君一派ともめている中、政が昌文君について来れない者を構っている余裕はないことを伝う。

先頭を歩く政、信、河了貂。
「ふぇー。すげぇ眺め」
時間が経ち、だいぶ上の方まで登ってきているようだ。
河了貂が政に尋ねる。

「ところで”山の王”っていうことはさー、山の世界にも国があって王様がいるってこと?」
政たちは山の民の軍勢を頼るために”山の王”に会いに山を登っているようだ。

山の王とは、平地の王とは趣が異なり、山界に住む無数の山民族をまとめている盟主のことらしい。

その頃、政たちの後ろを行く昌文君一派の兵が一人倒れてしまう。
疲労の限界に達したらしい。
壁が肩を貸してやるよう、告げるが昌文君は軍脚が乱れるため進めぬ者は下山して待機するよう告げる。

これに壁が異を唱える。
”あの恐ろしい山の民から王を守るには一人でも多くの兵がいる”と。

「恐ろしい??」
「恐ろしい山の民ってなんだよ!!」
400年間も穆公の避暑地を守ってきた山の民が”恐ろしい”と形容されたことが、信は理解できなかった。

山の民のことを知らない信と河了貂に壁は”馬酒兵”の話を話始める。

400年前の秦王、穆公の時代に秦の隣国、晋(しん)を大飢饉が襲った。
秦は晋と敵対していたが、晋の民を憐れんだ穆公は食料を送った。
しかし、翌年今度は秦が大飢饉に見舞われてしまう。
穆公は当然晋に援助を求めたが、晋は援助するどころか秦を侵略すべく大軍をおこす。
これにはさすがの穆公も激怒し、自ら先陣に立ち、晋軍と大合戦を演じた。

序盤こそ士気で勝る秦軍が優勢だったが、飲まず食わずだった秦軍は時の経過と共に力を失い、形勢は晋軍に傾いて行き、遂には穆公は晋軍に完全に包囲され絶体絶命のピンチに陥ってしまう。
しかしその時、異様な殺気に包まれた三百人の山の民が現れる。
穆公に受けた馬と酒の恩を返しにはせ参じたのだ。

山の民の戦いは凄惨を極め、味方された秦兵が背筋を凍らすほどに狂暴だった。
しかも狂暴なだけではなく、三百人の山の民は数千の晋兵を蹴散らし、敵本陣の晋王を捕らえてしまう程の戦闘民族なのだ。

穆公の避暑地を守ってくれているからといって、彼らが秦人に好意を持っていると考えるのは安直だ。穆公の死後、一方的に交流を断絶した我らを憎んでいると考えるのが自然かもしれない。
そんな彼らの世界に我々は無断で足を踏み入れているのだ。
もし敵とみなされたら一体どうなることか…


政は壁の話には構わず一人で先に進んでいた。
急いでその後を追う信と河了貂。
崖の上では武装した山の民が政たちを見つめていた。

第17話 遭遇

政たちのスピードに着いてこれず、昌文君一派がまた遅れ始める。
こういう時は身分の高い奴はダメだと意気投合し、士族の世界では位が金で買えるという話を持ち出し壁をからかっている。

その時、信がある事に疑問を持つ。
国一番のお坊ちゃんで超温室育ちの政が、なんでこんなにも体力があるのか…。
朱凶の首を跳ねたことや洞窟内で自分を片手で持ち上げたことを思い出しながら、明らかに死闘(たたかい)慣れしていることを不思議に思う。

昌文君が苦しそうな表情で山を登る場面に変わる。
文官になったとは言えまだまだ現役の武人と自負していた昌文君だが、政たちのスピードに着いて行けずに体力の衰えを自覚するが、政の剣矛になりうるのは秦国内に自分一人と歯を食いしばるが体が思うように動かない。
そのとき、信の姿を目が捉える。
信の武を認め、信なら政の剣になりうるのではないかと頭に過ったようだ。

しかし、すぐ自分の考えを否定する。
信ではダメだ。気が愚直(まっすぐ)すぎる。
武芸だけでこの戦国の世を斬りひらくことはできない。
やはり自分が…。
と立ち上がろうとしたとき、辺りを山の民に包囲されていることに気付く。

「大王をお守りしろっ‼」
「皆、上がって来いっ‼ 大王を中心に円陣を組めっ‼」
昌文君と壁が叫ぶが、
「騒ぐな! その気ならとっくに襲われているはずだ」
と政。

昌文君陣営に緊張が走る中、山の民の一人が政たちに近寄って来る。
「ココハ我々ノ世界ダ。平地ノ民が勝手ニ入ッテキタバアイ、両ノ目ヲエグッテ滝ヘ落トス」
「ダガ、オ前タチハ我ラノ王ニ会イニ来タ。会イニ来タ理由ニヨッテドウスルカ決メル」
「若キ秦王ヨ。我ラガ王ガオ待チダ! オ前ヲ王ノ城マデ連レテ行ク!」

自分たちと同じ言葉をしゃべること、両目を抉り滝へ落とすと言われたこと、王の城まで連れていくと言われたことなど、信たちは色々なことに驚かされた。

「だったら話が早ェじゃねェか」
と信が山の民の横をすり抜け先に進もうとすると、
「勘違イスルナ。連レテ行クノハ王一人ダケダ。後ハ今スグ下山シロ」
と信を投げ飛ばす。

第18話 託す思い

「ふざけるな‼ 王一人を残して下山できるわけがなかろうが‼」
昌文君が叫ぶ。
壁はいったん下山して他の手を考えるよう、政に提案する。

しかし、山の王は秦王に会うといっているから秦王は連れて行くと臨戦態勢の山の民が早くしろと迫る。

そんな中大柄な山の民の一人が出てきて政を連れて行こうとするが、信がこの大男を殴り飛ばしてしまう。

「お前らの言い分は分かったぜ。 次はこっちの言い分だ」
「お前らこそ皆殺しにされたくなかったら俺達を王の所までとっとと連れて行きやがれ‼」
信のこの行動で戦闘に突入するが、要求通り一人で山の王に会いに行くと政がこれを制止する。

考え直すように政を諭す昌文君と壁。
しかし政は、山の民の力を借りる以外に王宮に戻る手はないと、全員に下山の命令を出す。

「俺も下山させるのか」
「俺はお前の剣じゃなかったのか」
と政に詰め寄る信。
まっすぐな目で信を見つめ
「話し合いに剣は必要ない」
と政は山の民たちとその場を後にした。

一人山の民と行ってしまった政を心配する信たち。
「ったく誰だよ。山の民を味方につけよーなんて言ったの…」
信が言いかけたその時、昌文君がいきなり信に切り掛かる。

なんとか一撃をかわす信。
昌文君の部下たちは何が起こっているのか理解できない。

「ボケやがったかオッサン‼」
切り掛かってくる昌文君の剣を受け、昌文君が痛めている足を蹴り倒す信。
昌文君の急変振りに驚き昌文君に駆け寄る壁。

昌文君は足を押さえながら、信に頭を下げ頼みこむ。
「口惜しいが今の儂よりお前の方が役に立つ。王を追ってくれ」

大王以外の人間に頭を下げる昌文君に驚く部下たち。
しかもその相手は下僕の少年だ。

信もこれには少し驚いた表情を見せる。
大親友の漂からだけでなく、秦王側近の昌文君からも政のことを託されたのだ。

決意に満ちた表情で信が答える。
「オッサン、頭下げるだけ損だぜ。最初から俺は時間をおいて政を追うつもりだっだからな」
「穆公の避暑地で老体をいたわりながら待ってな」
と山を登ろうとする信に昌文君が声を掛ける。

「漂のことはすまなかった。こんなはずではなかった。許せ」
複雑な表情を見せる信。

第19話 驚愕の世界

崖をよじ登る信と河了貂。
少し遅れて壁が登ってくる。
その様子を遠く離れた崖の上から山の民が見ていた。

日が暮れ信たち3人は野営しながら政を救出する作戦を立てている。
「この3人でどうやって政を助けるんだ?」
「俺にいい考えがあるぜ。あいつら全員、面をしているだろ。だから面さえ奪えば簡単にもぐり込めるぜ」
「信の考えは使えそうだ。我々が向かっているのは山の王の根城だがはっきり言ってたいしたことはないと思う。山の王の国とはせいぜいワラぶき小屋が群立している程度のはず。もぐり込みすれば救出は難しくないはずだ」
そんな話をしてい中、河了貂が信の後ろに潜む大勢の山の民に気付く。
いつの間にか信たちは山の民たちに囲まれていた。


場面変わり、王騎の屋敷。
王騎は上半身裸で大きな彫刻を彫っている。

「殿。竭丞相より函谷関(かんこくかん)の関長に就くよう指令が来ております」
「受け身は性に合わんとお断りなさい」
と配下の者の報告に答える王騎。

函谷関とは秦国最大の国門で国守備の要である。

「竭氏はとうとう呂氏との全面戦争の準備に入りましたか。いよいよ若王のいない所で事が動き出しましたねェ。こうなってくると舞台に返り咲くのは至難の業ですよォ」
誰かに語り掛けながら王騎は脱出劇の際に昌文君が口にした”政様は昭王を超えるぞっ”という言葉を思い出していた。

「………嬴政…。いわくつきの生まれの不運の王。”戦神”とまで言われたあの昭王をどう超えるというのか見せて頂きたいものですねェ」


再び場面変わり、信たち3人が手を縛られ山の民に連行されている。
「殺されなかったということは山の王のもとへ連行するのだろう。大王のもとへは迷わず行けそうだ。大王救出は着いてから考えよう」
と壁はこの状況をポジティブに捉えていた。

縛られたまま山を連行されている3人。
随分長く歩かされているようだ。

そして遂に辿り着いた山の民の王国を目の当たりし3人は目を丸くして驚く。
山の民の王国は、入り組んだ崖の至る所に立派な屋敷が建てられた要塞の体をなしていたのだ。